個人とは全体主義の欠陥である
非常に乱暴な命題を許してくれ
もしこの一人が死ねば
ほかの千人が死ななくてすむようになるなら
その一人を殺していいものか
私たちの世界ではそれは「いい」ことになっている
それは仕方がないよ、と。
もしこの十人が死ねば/ほかの百人が死ななくてすむなら/この十人を殺していいか
もしこの三人が死ねば/ほかの五人が死ななくてすむなら/この三人を殺していいか
それは「だめ」だとすぐわかる。
その三人の存在は消せないから。
最初の問題に立ち戻って「この一人」を思う時、その存在も消せないことがわかる。
つまりは命題そのものがまったく成立しない。