あるコンバースの死
昨日見た靴とよく似ている気がした。
昨日見た靴もコンバースの白黒で、方っぽだった。
汚れて湿っていた。
昨日は落ちていたコンバースのその横を、よろよろと女がよろめいていた。
裸足だったように思えた。
思わず上を向いた。
落ちてきたのかと思ったから。
しかしそれらしきものもなく、思いすごしかと思って、目を下ろすと、よろめく女の後ろ姿が影に隠れた。
さて我に残されしものは記憶のコンバースと眼前のコンバースのみ。
その両者が同一のコンバースではないと直観しながらも、片方のコンバースが落ちている偶然がそう続くものか、と思う。
さて昨日あれはどこで見たのかと過去をたどらんとせども、石造りの建物の間に記憶は迷い込み、コンバースとよろめく女の記憶は、ちょうど町にまぎれこんだよろめく女の後ろ姿のごとく消える。